「天才はあきらめた」を読んで思い出した事
南海キャンディーズ山ちゃんのこの著作を読んで、彼が若手だった頃の、15.6年前ぐらいのbaseよしもとメンバーの事を懐かしく思い出していた。
当時は乳児の育児に追われていた私。
劇場に観に行けない分、お笑い好きの後輩からの情報や、お笑いに詳しい方のブログ等、ネットの情報などを、今より懸命に収集していたと思う。
ある時、チュートリアルやフットボールアワー等がbaseよしもとを卒業し、新体制ができると知る。
誰かのブログから、新生baseよしもとのトップはトーナメント方式の戦いで決定するらしいと知り、その戦いにダイアンが優勝したと聞いた。
なのに、ふと気がついたら、baseのトップは、笑い飯、麒麟、千鳥の3組になっていた。
山ちゃんも本の中でよしもと側の理不尽な扱いについて少し記してあったが、私もこの一件で、よしもと内部で色々な理不尽があることを悟った。
M-1が始まって数年、大会の知名度も上がり、よしもとがM-1で活躍しているメンバーを推すのも無理はないが、ダイアンが気の毒だった。
しかしM-1を度外視しても、Wボケの笑い飯、岡山弁の千鳥、ストーリー展開が鮮やかな麒麟、3組ともその当時は誰も見た事のなかった漫才を繰り出し、強烈な個性を放っていた。
ダイアンは確かに面白かったけど、津田さんも今のようには弾けてなかった頃で、上記の3組ほどのインパクトはなかったように思う。
しかし上記3組がかすむほどの、さらに強烈な個性を持った男女コンビが登場する。
南海キャンディーズだった。
M-1で一躍ブレイクした彼らの活躍はもう全国のお笑いファンが承知しているだろう。
多忙になり、思うようなネタができず、翌年のM-1決勝では最下位になった彼らだったが、その後、上方漫才大賞では、麒麟を破って優秀新人賞に輝いている。
記憶が間違ってなければ、その時、しずちゃんがバスガイドで山ちゃんがお客さん、というシチュエーションのネタをしたと思う。
麒麟ファンの私だったけど、南海キャンディーズの漫才を観て「あ、負けた」と思ったのを覚えている。
ちなみに、上記の上方漫才大賞に関する記述は、山ちゃんの本の中では見当たらなかった。単にページ数の制約で割愛したのか、納得できない出来だったのか。。
しかし私には凄く面白かったし、何より唯一無二の漫才だと思った。
他の誰にも出来ない漫才。
「天才」と言っていいのかはわからないけど、山ちゃんもしずちゃんも、才能豊かであることは確かで、その上尋常でない努力も重ね、今のように全国区でも唯一無二のポジションを獲得したのも必然のように思う。
劇場で安定した人気を誇り、トリを取る事も多くなった笑い飯、
ここ数年で全国区のブレイクを果たした千鳥、
芸達者で漫才以外でも大喜利などで活躍し、東京でも安定した地位を築いた麒麟、
大阪では「最もチケットが取れない漫才師」になり、満を持して今年東京進出したダイアン、
そして、baseよしもとのトップを通り越してあっという間に全国区の人気者になった南海キャンディーズ。
他にもアジアン、NON STYLE、とろサーモンなど、あの頃baseよしもとで切磋琢磨していた漫才師たちが、今それぞれの場所で大活躍している。
この本を読んで久々にその頃の事を思い出し、ああ、あの頃の私は凄く貴重なものを目撃したんだなと思い、鳥肌が立ってきた。
私は多分、これからも彼らをずっと見続けるだろう。
あの頃はまるで想像できなかったダイアンのブレイクが見れたのだから、中年になり、やがて老年になる彼らが、これからどんな活躍をし、どんな風になっていくのか、本当に本当に、楽しみで仕方ない。