カーネーション感想④
つらい。
つらすぎる。
戦争によって色んな人の人生が狂わされていく。
勘助は日中戦争の戦地から帰ったが、無事ではなかった。
心が壊れた。
勘助が家に引きこもる日々から脱してやっと職場に行けた日、糸子が良かれと思って、勘助に、彼がご執心だったサエに引き合わす。
が、それで色んな事がフィードバックしてしまった。
大雨の中、ずぶ濡れの勘助の母が糸子の元に現れる。
勘助が二階から飛び降りようとしたという。
「あそこまで回復するのにうちら家族がどれだけ神経使ったか」
「あんたの図太さは勘助には毒や」
「商売も上手くいって、勝ってばっかりのあんたにはわからんやろ」
「勘助と二度と会わんといて」
鬼気迫る濱田マリさんの演技。
糸子には悪気はなかった。
そして糸子とて、商売を繁盛させるのに、時には理不尽に遭い、苦労もし、懸命な努力を積んできた。
が、あまりにも弱者に無神経だった。
勘助の母は多分、ずっとずっと耐えてきた。
勘助が思うようにいかず、髪結いは斜陽産業で、思い切って買ったパーマネントの機械も、戦争の時局の中で不謹慎とされてしまう。
うまくいかない事ばかりの中、なんとかかんとか生きてきたのだ。
しかし糸子も、いつまでも落ち込んではいられない。
家族と縫い子達の生活を背負っている。
戦争中の年の瀬、縫い子に頼んで、糸子は勘助の家に野菜などをそっと差し入れる。
食糧が逼迫する時代に、せめてお正月のお雑煮ぐらいは食べてほしいという想いを込めて。
手痛い思いと引き換えに、糸子はまた一つ成長した。
しかしもう取り返しはつかなかった。
戦争さえなければ、こんなことにはならなかったのに。
困窮が人の心をどんどん蝕んで生き、実際の戦争の惨禍がとどめを刺す。
結局、人々を物心ともに疲弊させて、永遠に続きそうな遺恨を残しただけだった。
もう二度と戦争はしてはいけない。
それだけは、その思いだけは、一生ぶれることはない。