あらほうしブログ

好きなお笑いの事と日々の雑感を綴りたいと思ってます。

不動産屋の大叔父

 

京都で不動産屋を営む大叔父がいる。

 

その大叔父には小さい頃から年一回ぐらい会う機会があったが、何の仕事をしているのかずっと知らなかった。

 

高校生ぐらいになって「あのおっちゃんは不動産屋」と聞いた時には驚いた。

 

よくある不動産屋の風景…「○○不動産」という看板が掲げられ、売買、あるいは賃貸の物件の間取り図が壁一面に貼られている…という一般的な不動産屋の外観を全くしていない。

 

ただ名字の表札がかかってるだけの、京都では一般的な町家だ。

 

大叔父はそこで、中古物件売買専門の不動産屋をしているのだが、看板を掲げずに商売しているのは、一見さんお断りだからだ。

 

そんな事で商売が成り立つのかと最初驚いたが、大叔父は昔から祇園祭に命をかけていて、祇園祭の一ヶ月ぐらいは全く仕事をしないのを子どもながらに知っていたので、まあ、あのおっちゃんならなんとかできるんだろう、と、妙に納得してしまった。

 

実際、京都の地の人達の横のつながりは半端なく強いらしく、地縁のある人達の紹介の物件売買だけで充分食べていけるらしい。

 

大叔父は母方の親戚なのだが、母のご先祖は少なくとも江戸時代には洛中に住んでいたらしく、つながりはずっと引き継がれているとの事。

 

羨ましいなあ。

まあ、ウザい事もいっぱいありそうだけど^^;

 

ところで、私が結婚するにあたり、母を通して大叔父に物件のアドバイスをもらったのだが、「素人に物件を見極めるのは絶対無理。僕は中古物件を扱ってるが、中古は絶対にやめろ。買うなら大規模ニュータウンの中の新築物件にしろ」との事だった。

 

たまたま巡り合わせがあり、大規模ニュータウンの中に建つマンションを買ったのだが、大叔父が言った事の意味を深く理解していた訳ではない。

 

だが、その意味が年々理解できるようになってきた。

 

先日、大きな水害があったので、近所のハザードマップを見直す事にした。

 

その時に自分の街だけでなく近辺の街もチェックしたのだが、大規模ニュータウンのある場所に浸水や土砂崩れの被害予想地域は一切なかった。

 

それに気付いた時、背筋がぞわーっとした。

 

大規模ニュータウンの物件は、中、小規模のニュータウンや旧市街の物件より、一般的に値段が高い。

 

しかし高い理由がちゃんとあったのだ。

 

私にとっては、たまに遊びに行くと「いずもや」の鰻を食べさせてくれる気前のいい「おっちゃん」は、歴とした不動産のプロである、という、当然といえば当然の事に気付いた瞬間であった。

 

プロの不動産屋として自分の目利きを頼りに腕一本で稼ぎ、他方、祇園祭という「趣味」のために平気で一ヶ月休める大叔父の生き方が、とても格好良く、とても羨ましく思えるのだった。